注文住宅

景色を愉しむ工夫が詰まった、四角いおうち – olney.03さん

額縁のような大きな窓、そしてインパクトのある四角い外観が特徴的なolney.03さんの注文住宅。シンプルでミニマルな暮らしを突き詰めながら、あえてゆとりのある空間を設けることで、過ごす場所によって違う景色が広がる多彩な暮らしが実現しました。

基本情報

お住まい:兵庫県

工務店:株式会社笹原建設     
設計事務所:藤原・室建築設計事務所
構造: 在来軸組工法(木造)

敷地面積:約70坪
延床面積:約30坪

家族構成: 夫、妻、猫1匹

打合せ回数
間取り:約5回
内装: 7回

ひと繋がりでも動きのある豊かな空間

延べ床面積約30坪とは思えないほど、さまざまな空間や景色が広がるolney.03さん邸。その秘密は、「仕切りのないゆるくつながった間取り」と「天井高や床レベルの変化をつけた動きのある空間づくり」にありました。

景色を愉しむための家づくり

”景色を愉しむ家”がメインテーマのolney.03さん邸。その言葉どおり、大きく切り取られた窓からの景色は、まるで絵画のようです。

「この土地に家を建てると決まったとき、“大きな窓から景色を愉しむ家”が明確なテーマとなりました。ただ、予算に見合う建築面積が想像以上に小さくて…そんなとき、建築家さんから、この面積をむしろプラスに捉えた空間づくりを提案していただきました。

ただ広く面積を取るのではなく、立地や周りの景色を活かし、外の自然の景色が部屋のなかに溶け込むような空間づくりを目指しました。」

仕切りのないガラスでつながる空間

過ごす時間が1番長いリビングを優先的に考え、広さと明るさ、見晴らしのよさを確保できるようにリビングは2階にされたとのこと。

「家づくりで重要視したことは、どこにいても大きな窓からの光や景色を感じられる空間づくりです。決して広いスペースではないので、壁や仕切りを極力なくす代わりに、ガラスや段差をうまく取り入れることに。そうすることで、限られた面積のなかでも開放感や抜け感、そして全体がゆるくつながりながらも動きのある面白い空間が実現できました。」

さらに、数字的な面積よりも体感として感じられる開放感や居心地のよさを大切にされたというolney.03さん。そのために、壁をなくして一面をガラスにすることで視線の抜け方をうまく活かし、扉を極力なくして開放感を演出されたそうです。

「壁ではなくガラスで仕切ることで、心地よく自然の光が差し込み、昼間は灯り要らずでどこにいても明るく過ごせています。

寝室や夫の個室、洗面室兼脱衣場などある程度プライベートの確保が必要なところには扉を設置しましたが、すべて引き戸式を採用しました。開けっ放しでも場所を取らず、きれいに収まるように設計段階から工夫していただきました。」

玄関とトイレ以外の扉はすべて引き戸式にされ、引き戸を開けた状態にすると、1階から2階のすべての場所がひとつながりになるそう! 考え尽くされた開放感あふれる間取りは、とても参考になりますね。 

垂れ壁とそで壁、段差を設けてメリハリを

olney.03さんのInstagramを拝見すると、同じリビングを切り取っていても、そこに映る景色や見え方、雰囲気が違っていて、とても驚きました。

「垂れ壁やそで壁であえて視線を邪魔することで、過ごす場所によって景色や見え方に変化が生まれるようにしました。

さらに、わが家では部屋ごとに床レベルや天井高を変えて、それぞれの空間に変化や動きを出しています。そうすることで、仕切りがなくても用途や時々により、各部屋を別空間として使い分けることも。

1階の寝室や夫の個室、2階の2つのフリースペースなど、すべて同じ面積ですが、4箇所とも天井高が違うので全く違った雰囲気を楽しむことができています。 また、段差があることで、そこがベンチのような新たな居場所にもなり、実用的にも大活躍です。」

こちらはキッチンから見て右側にある少し小上がりになった2階のフリースペース。そで壁があり、キッチンからは見えないような設計に。壁一面に可動棚を取り付け、日用品や書類、雑貨などの収納スペースとして使っているそう。

「たくさんの本や雑誌を置いて本棚としても使っているので、椅子を置いて書斎のような雰囲気も愉しんでいます。一番天井高が低い場所でもあり、落ち着いた雰囲気が夫のお気に入りです。」

リビングとの一体感を意識したキッチンスペース

キッチンスペースも床レベルを約20㎝下げることで、壁を極力低くし、リビングとの一体感を意識されたとのこと。キッチンと一体型になっている、カウンター付きのダイニングテーブルもolney.03さんのこだわりポイントに。

「キッチンとダイニングテーブルがフラットになるように、キッチンの床レベルを下げました。一体化することで、見た目もすっきりとして省スペースになると同時に、テーブルとキッチンの間に段差ができないので、配膳や掃除など使い勝手もよく気に入っています。

さらに、床レベルを下げたことで外からの視線を遮りながら遠くへ視線が抜けるので、料理や片付けをしながら、よりきれいな景色を愉しめています」

ひとつながりの家だからこその家族の過ごし方

「大きな窓、そして扉や仕切りがない家は、正直住んでみるまでプライバシー面での不安がすごく大きかったです。でも、いざ暮らし始めると、外からの視線は意外に気にならず、それ以上に圧迫感のない明るく開けた空間をとても心地よく感じています。

今では思い切った決断をして本当によかったと思っています。どこにいても違った風景や違った過ごし方ができ、時間や天気、季節によって移ろう景色が家のなかにいて感じられることは、これまでの生活に比べても、日々変化のある面白くも豊かな生活を送ることができています。」

仕切りがないことで愛猫のタラオくんも家中を自由に行き交いして楽しく過ごしているそう。家全体が居場所になっていて、楽しそうに暮らしているのがとても嬉しいと話してくれました。

ミニマルでシンプル。だけどゆとりを楽しむ暮らし

ルーバー天井が独特の雰囲気を醸し出し、静けさが漂うこのおしゃれな空間は、なんと土間だそう。限られた面積のなかで、あえてゆとりのある空間を設けるなど、olney.03さん邸には暮らしをより愉しむための工夫が詰まっていました。

暮らしが豊かになった、ゆとりある土間スペース

寝室やトイレ、玄関などを最小限の広さにし、キッチンや収納も極力少なくミニマルに暮らしている一方で、あえてゆとりのある空間を設けられたolney.03さん邸。さまざまな過ごし方ができる多目的なフリースペースを、3つも作られた理由をお伺いしました。

「限られた面積のなかでもいかに面白くも居心地のいい空間を作ることができるかを考えていたとき、建築家さんから“あえて用途の決まっていないフリースペース”をご提案していただきました。当初はイメージしにくかったこの空間ですが、面白いご提案を受け入れたことで、家のなかでの生活が確実に豊かになりました。」

フリースペースは2階のリビングにある大きな窓に面した2つの空間、そしてもうひとつが1階にある約15平米の土間。土間の床はモルタルで、天井は梁をむき出しにしたラフな仕上げに。モルタルにしたことで汚れや傷を気にせずにすみ、また濡れてもすぐ乾いて元通りになるので、使える幅が広がっているそう。

「一見、無駄にも思える空間ですが、セカンドリビングや来客時の客間、壁をスクリーン代わりにしたシアタールーム、軽い運動の場、そして友人や家族が集まったときには地べたにラグを広げて食事やお酒を楽しんだり…まさに使い方はさまざまです! 

夫が気が向いたときにおこなうDIYも、今までは外で作業をしていましたが、色々な工具や道具、材料を土間一面に広げて家のなかでできるようになりました。これからもまた新たな過ごし方が出てきそうで楽しみです。」

土間の先に見えていたこの空間。こちらは、寝室と旦那さんの個室をつなぐ中庭とのこと。土間よりも少し低い位置に設置したルーバー天井によって作られる光や影も美しいですね。

オン・オフを大切にした家づくり

「家づくりではまず、何を優先するのかを検討しました。一番過ごすことの多いリビングを最優先に考え、広さと明るさを確保することに。洗面室やお風呂、トイレは極力コンパクトにし、寝室に至っては、前の賃貸の家から使っていたベッドが収まる最小限の面積にしました。

新たな住まいではすっきりとシンプルな暮らしを意識し、収納が極端に少ない分、モノが増えないよう無駄な買い物も減ったように思います。家に迎え入れてからどこに置いて、どんな使い方をするのかをイメージしたうえで購入するようになりました。」

あえてゆとりのある空間を作る一方で、省スペースにできる部分は積極的にコンパクトにされたんですね。上の写真はolney.03さん邸の洗面室兼脱衣室兼衣類収納スペース。見える収納にされたことで、いつでもきれいな状態を維持できるように、片づける習慣も身に付いたそうです。

さらに、玄関収納にもこだわりが。

「家自体をできる限りシンプルに、生活感を極力抑えたデザインに仕上げたかったので、玄関の収納は壁と一体化させることに。見た目を重視しながらも、たっぷり収納ができる機能面も兼ね備えているところが、とても気に入っています。」

無駄をなくしたインパクトのある外観

無駄がなく飽きのこないシンプルなデザイン、それでいてほかにはない外観というご夫婦の理想を実現されたolney.03さんの四角いおうち。建築としての外観のインパクトを重要視されるなど、そのこだわりをお伺いしました。

坂道の先に建つ四角いかたまりのような家

緩い坂道を上がった突き当りに位置するolney.03さん邸。そのシンプルでいて圧倒的な佇まいに、惚れ惚れしてしまいます。

「土地ならではの景色を活かすべく、土地が決まった後は”大きな窓から景色を愉しむ”が設計においてもメインテーマとなりました。建築家さんからの設計提案が今の家の外観、形状の基となっています。

建築家さんは坂道を進んでいった先に、真ん中に穴の開いた四角いかたまりがポツンと佇むイメージが湧いたそうです。そのため、正面から見たときに額縁のように見えることをイメージし、大きな窓と開口が正面にくる設計に。そのおかげで、前方に広がる山の稜線や一面に広がる空、住み慣れた地域の町並みなど、家に居ながら景色を愉しむことができるようになりました。

大きな窓の素敵なおうちはほかにもたくさんあると思いますが、建物のど真ん中に大きな正方形の穴が開いている家…ありそうでなかった外観で、潔いほどのシンプルさに夫婦ともに魅力を感じています。」

こちらは玄関側の横からの外観。正面から見ると真四角のように見えますが、横から見ると外観の印象がガラッと変わることも、こだわりのひとつだそう。

「外観の意匠にこだわった結果、余計なもの、機能的な生活感のあるものはすべて目立たない位置に設置することになりました。塀や門を設けていない分、玄関が少し奥まった位置にあるのはプライバシー面でも好都合でとても気に入っています。」

外と中、同素材で仕上げて連動感を演出

外壁と内壁で同じ塗装杉板を使い、外と中との連動感を出されたというolney.03さん邸。ガラスで仕切られた玄関は、同じ素材を使うことでひとつながりに見えますね。

「外観がシンプルなデザインなので、ベタッとした無機質すぎる素材よりも立体感や風合いが出る素材が理想でした。メンテナンスの懸念もありましたが、住むほどに味が出る自然の素材で、経年変化を楽しむことができる塗装した木材を使うことに。

色にこだわっていたことと、コストカットの面から、思い切って外壁とそれに連動する内壁をすべて自分たちで塗装することにしました。部屋のなかにも使う素材なので、色はできるだけ濃すぎない優しいグレーに。

また外壁は雰囲気を変えることを意識し、前方と後方の壁の色をトーンの異なるグレーで塗装しました。」

外壁と内壁をご夫婦で塗装されたこと、本当に驚きました! また、色味についても徹底的にこだわり、塗料や塗り方、塗る回数など何枚もサンプルを作って試行錯誤されたからこそ、外観を引きてる絶妙なグレーが完成したんですね。

こちらは、2階のリビングスペース。ソファとキッチンをつなぐ壁にもセルフペインティングの木の壁を使用しているそうです。グレーで落ち着いた雰囲気に仕上げたキッチン側のスペースと外観を連動させるために、外壁もできるだけ近い色で仕上げたとのこと。

「家に帰ってくるとき、いまだに自分の家の外観が新鮮で、見入ってしまうことも。自分たちで塗装したこともあって、改めて自分たちだけの特別な家だと実感しています。

時間や天気によって、色の見え方や木の表情が変わるところも気に入っています。これから先、経年変化で木の風合いがどのように変化していくのか、住むほどに味わいが出てくるのが楽しみです。」

編集後記

あえてゆとりのある空間を設けた巧みな空間づくりで、豊かな暮らしを叶えたolney.03さん邸。

こだわりを明確にもち、建築家さんとの信頼関係があったからこそ、ほかにはないデザイン、そして多様な過ごし方ができるおうちが完成したんですね。

olney.03さん、ありがとうございました。

■今回お話を伺わせていただいたかた
olney.03さん

ABOUT ME
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はなむらあや/ライター・整理収納アドバイザー。夫、息子(5歳)、娘(2歳)の4人暮らし。2019年に夫婦で設計した注文住宅が完成。Instagramでは「おしゃれでスッキリした暮らしの始め方」を発信中❀ BLOG LINK:https://www.instagram.com/h_aya_home/